マイカー感覚の潜水艦

マイカー感覚の潜水艦!?
ほ、欲しい。いやマジで。
いくら何だろう。
小学校5年まで泳げなかった。
正確に言うと、息継ぎを覚え、
25mのプールを泳ぎ切れたのが、小学校5年生。
海の近くに産まれ育ったにも関わらず、である。
じゃぁ、夏場は海に泳ぎに行かなかったかと言うと、
そう言うわけではない。
泳ぎには行かなかった。
潜りに行ってたのである。
詳しくは知らないが、俺が住んでいた地域の人は、
全員が漁業権を持っていた。
漁業権と言うのは、
この場合、海産物を取っても良い、
罰せられない、と言う権利である。
もちろん取って良い海域と言うのは、
ハッキリとではなかったが決まっていたように思う。
隣の地域では、友だちと一緒に泳ぐことはあっても、
取ることは無かった。
息継ぎが出来ないので、
厳密に言えば泳ぐことは出来なかった小学校時代。
それで潜りに行っていたと言うのも何だが。
潜りに行くときには、
海中で使うヘラを鋭くしたような金具と網を浮輪に付けて、
海に入って行った。
足が届かなくなるギリギリ位のところで、
浮輪に括り付けてある重りを海中に投じる。
後はその重りに繋がってる紐を頼りに、海中へ潜って行くのである。
もちろん手足も動かして、水中へ沈んで行ったが。
水の中に入って。
ほんの短い時間である、
海草をかき分け、岩の裏側を覗きこみ、目的のものを探す。
探していたのは、何でも。
サザエはすぐに見つかった。
海中で特徴的な形をしているから、
色が背景と同じでもすぐに見つかる。
アワビやトコブシは、
水中では背景の岩と模様がほとんど同じで、
若干盛りあがってるんだけど、人の近づく水流を感じて、
わずかに浮き上がってた部分をもピッタリ岩に見を寄せてしまうらしく、
当時は一度も取れたことは無い。
一個、手に取って。
それでも充分である。
取れない、見つけられないことの方がずっと多いのだから。
息が切れ掛かって、浮上する。
自然に浮き上がるのに、海面が遠いと感じ、
慌てて手足を動かし、顔を出す。
深く呼吸する。激しく。
浮輪につかまって、
海底付近の冷たい水で冷えた体を成るべく引きあげる。
表面の水は温かい。
水中眼鏡の向う、太陽がぎらぎらしている。
海中から浮かびあがって来るときに、
水中に光が鋭く刺さっているのを見る。
波間に燐き、一時として同じ光ではなかった。
サザエ数個で500〜600円くらいだったかな。
当時の俺には、それなりに貴重な小遣い稼ぎである。
もっとも大人は一日に数万円稼いでいたけど。
そう言えば今年は海に入ってない。
去年は。
去年も入ってないか。
今潜っても、500〜600円くらいかな。

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