すっかり昏くなった夜道、家路を急ぐ。
角を曲ったところで、ふらつく自転車に驚き、足を止める。
ライトを点けていなかった。
その自転車に乗っていたのは、OL風の女性。スーツ姿にパンプス。
俺のことなど意に留めること無く、
交叉点にさしかかって、ブレーキを掛けてスピードを落した。
停止。
そもそもそれほど早いスピードではなかったのだが。
足はペダルに置いたまま、
片手を電柱に掛けて体を、
自転車を倒れないように支えて、信号が変るのを待っていた。
通り過ぎるところで見ると、その姿勢で、
電柱に掛けた左手だけでなく、
ハンドルを抑えている手首にも非常に力が掛かってる。
腕全体でハンドルを押さえこんでる、そんな腕の曲り工合。
足が届かないのだ。
サドルを高く設定してある。
なんで?
それはスタイルなのか。
まぁ、どうでも良いことだ。
だって、ぶつかられなかったのだから。