もう一つの旅の物語

2月20日から4泊5日で行ったタイ旅行は僕にとっては8回目となったが、今回は従兄弟と叔母が同行していた。

もう一つの旅物語。

昨年、従姉妹の兄が癌で亡くなった。
亡くなる前にお見舞いに行った際に、従姉妹と話していて海外旅行に行きたいと話していた。

従兄弟が亡くなり、お葬式も済んだ後、従姉妹に2月後半にタイ旅行を計画していると伝えた。
そして叔母へ、一緒にタイに行かないかと誘った。

気晴らしになるのではないか、と思っていたのは事実。
一緒に旅行代理店に行き、共に飛行機とホテルを予約したのは三ヶ月前のこと。

それから時々会って、旅行の準備やタイの話や、タイ料理を食べたりしていた。

そして、2月20日、共にタイへ。

チェンライに一泊。
翌日観光してチェンセーンへ。

叔母が亡くなった従兄弟の遺品の中から小さな証明書用の写真、2枚を持って来ていた。

チエンセーンの朝、叔母と従姉妹はその写真の一枚をメコン川に流したそうだ。

ホテルで朝ご飯を済ませて、チエンセーン市街を散策した。
その途中、ワット プラタート チェディルアンへ。

ちょっと散歩のつもりで来たのだけど。

ガイドさんに案内してもらい、たまたまいたタイのお坊さんに死んだ従兄弟のために御経を上げてもらえないかとお願いした。

叔母が持って来ていた写真の裏に従兄弟の名前を書いて渡し、お坊さんは名前を読み上げて御経を唱えてくれた。
もちろんタイ語で、御経の内容は解らなかったのだけど。

読経を終えてお坊さんが器に水を注いでくれた。
その水をお堂の前の木の根に注ぐのだと、ガイドさんに聞く。

俺と叔母と従姉妹と、手を合わせて木の根に水をあげて、三人思わず泣いてしまった。

ひとしきり泣いたあと、叔母は涙を拭いて、ありがとう、ありがとうと、何度もガイドさんに言っていた。

その後もあちこち観光して、4泊5日の日程を終えて、日本に帰って来た。

タイから戻ってしばらくしてから、叔母から旅に一緒に行って良かった、気持ちの整理がついた、と、メッセージを貰った。

従兄弟の葬儀は従兄弟の奥さんが喪主となり、身内と親しい友人で小さく済ませていた。
火葬して御経を上げてもらい、来た人で簡単な食事をして。

平日の昼間だったので、俺は参列しなかった。

都会の人間に墓はない。
彼の遺骨はまだ奥さんの住むアパートにあると聞く。

叔母は、彼女の息子の死を理解はしていても納得していなかったのだろう。

遠くタイで、従兄弟の写真を流し、従兄弟のために御経を上げて貰ったことで死を納得したのだろうか。

葬儀は亡くなった人のためのみならず、生きてるもののためにもあるのだろう。

そして叔母はガイドさんの優しさに感謝の気持ちすると伝えて来た。

また次の機会を見て、一緒に行こう、と俺は叔母に伝えた。

また叔母と従姉妹とタイへ。
今回出来なかった、小さな仏像を買うのだという目的を、次は達成しよう。

そして、メコン川を眺めつつ、のんびりビールで乾杯するために。

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