昼飯はここ。
神田駅から5分。
トンカツのお店。
でも細い路地裏にあって、
店は汚くて、
おじさんとおばさん、二人で営んでいて、
店の中は狭くて、
昼飯時にはサラリーマンが列をなしていて。
部長さんに連れられて入ってカウンター席。
注文すると、目の前で肉厚の豚ヒレ肉が天ぷら油に投入された。
しばらく待って。
カツが油から取り出されて、しばらく油が切られる。
おじさんが入れる包丁の音が、サクッサクッと軽い。
付け合わせはキャベツだけ。
ちょっと辛目のソースをたっぷり。
あつあつでジューシー。
豚の脂身の甘いこと。
お腹一杯になった。

京浜東北線は信号故障で止まってる。
まだ帰れる見込みなし。
昼間、日本橋から神田まで歩く。
これから天気が荒れるらしく、雲が流れている。
ふと自分がこの町を気に入ってることに気付く。
細い路地とか知らない場所も多いというのに。
仕事場になって1年半。
この町に馴染んだかな。

上下上り線ともに、京浜東北線ストップ中だとか。
電車の中に乗ってる上司より電話が入る。
え。
えええ。
帰れない…

ふと、脇に立った女性の、
肘からかけた紙袋の中身が目に入る。
500ミリリットルのペットボトルが3本。
飲むんだよな、
きっと、会社で。
別に、体鍛えるために、重りとして持ち運んでるわけではあるまい。
多分。
まあ、何のために、かは知らないけど。
とりあえず、揺れる度に、
ゴツッ、ゴツッて当たるのは勘弁して欲しいな。