思ったよりも寒いな、と肩を丸めて歩いていた。
風が弱まり、花の香りに気づく。
この花の名前が思い出せない。
だけど、親父が作っている花の一つだ。
実家は半農半漁で、園芸農家である。
この花は露地栽培で、ビニルハウスとか入ってない。
葉の匂い、茎の冷たさを思い出す。
そして、ここしばらく、土を触っていないことに気づく。
自分の仕事は嫌いではない。
だが、畑に出て花を育てて、出荷している親父の仕事を手伝いに行きたい衝動を覚える。
親父は60過ぎのくせに、いまだに腕周りは俺より太くて、日焼けして真っ黒である。
たぶん相撲取れば負けるんじゃないだろうか。
人として仕事として、とか考えそうになって、止めた。
俺は、俺の選んできた生き方を否定できないのだから。
日本橋
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